不動産市況

東京都心の不動産市場は活況である。新築マンションはもちろん、   個人投資家が狙う「収益物件」と呼ばれる数億円の1棟マンションやアパートも活発に取引されている。価格も上がっており、その分、利回りは落ちている。

不動産業者たちの合言葉は「東京五輪までは上がり続けますよ」。そう言われれば、誰もが「ああ、そうかな」と思ってしまいそうな響きがある。確かに、東京五輪は地球規模の祭典である。それが5年後の東京で開催されるのだから、不動産価格が上がらないわけがない、という漠然としたイメージを抱いてしまいがちだ。

例えば、ロンドンでは五輪開催(2012年)後も一部の不動産価格が上がり続けているという。さらにさかのぼり前回1964年の東京五輪後も、日本経済は高度成長を遂げた。その結果、「地価狂乱」という不動産価格の高騰も招いてしまった。 こうした過去をみても、「五輪開催=不動産価格上昇」というのは、いかにも受け入れやすいイメージだが、本当にそうなのだろうか。

不動産の価格というものは、基本的に需要と供給の関係で決まる。例えば、前回の東京五輪のあとは日本経済の高度成長期に当たった。工場やオフィスビル、住宅など不動産への需要は高まるばかりで、それに対して供給が追い付いていなかった。当時、大都市圏では住宅を購入する場合はほとんどが抽選だった。なかには何十回も抽選に外れる人もいた。その住宅不足を経験したのは、団塊より少し上の世代。今ではほとんどが後期高齢者に達している。

実のところ、東京に限らず日本では全国的に住宅が余っている。13年の総務省調査によると、全国の空家率は13.5%。東京でも10.9%が空家になっている。一方、東京都が出している予測によると、五輪が開催される20年に東京の人口はピークに達する。そのあとはじわじわ減り始めるばかりではなく、どんどん高齢化する。さらにその10年後の30年には、住宅への需要とシンクロする世帯数も減り始める。つまり、五輪を境にして、東京の住宅は供給過剰がますます顕在化しそうです。

現在は不動産の価格高騰は続いていますが、国内のみならず外的要因など、過去を振り返ると何らかのタイミングで不動産価格の下落は避けられそうになさそうですね。

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